Director-General of WHOTedros takes part to a news conference after a meeting of the Emergency Committee for Pneumonia due to the Novel Coronavirus 2019-nCoV in Geneva

Director-General of World Health Organization (WHO) Tedros Adhanom Ghebreyesus takes part to a news conference on the Novel Coronavirus 2019-nCoV in Geneva, Switzerland, January 22, 2020. Christopher Black/WHO/Handout via REUTERS ATTENTION EDITORS - THIS IMAGE WAS PROVIDED BY A THIRD PARTY REFILE - CORRECTING DATE

 

 

中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の発症が台湾でも確認され、蔡英文総統は1月22日、 世界保健機関(WHO)への台湾加盟を認めるよう改めて呼びかけた。

 

中国が「一つの中国」原則を盾に台湾を締め出し、WHOがそれに屈するいびつな構図が続く。だが人命にかかわる公衆衛生の深刻な事態に台湾という空白域をこれ以上放置してよいはずがない。拡大阻止に責任がある中国は無用な介入をやめ、WHOも門戸を即刻開いてもらいたい。

 

WHOは1月22、23日の緊急委員会で「緊急事態宣言」を見送ったが中国本土、本土外で感染者は急増を続ける。WHOと各国・各地域の緊密連携は焦眉の急である。

 

「台湾は世界的な防疫の最前線だ」と蔡氏が訴える通り、経済規模でマレーシアを上回り、人口2300万人の台湾排除は感染対策の抜け道となる恐れがある。

 

実際、台湾で73人が死亡した2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行の際には検体をWHOから入手できず、対応が遅れたと台湾側は訴える。

 

その後、「一つの中国」を条件付きで認めた中国国民党の馬英九政権(08~16年)下ではWHO総会にオブザーバー参加が認められた。「一つの中国」原則を認めない民進党の蔡政権発足の翌17年以降、出席は認められていない。

 

しかし、中台間の人の移動はSARS当時の比ではない。蔡政権が中国向け団体旅行を中止する措置を取ったのは、危機感の表れだが、活発な往来を抑えられるものではなかろう。人的交流が緊密な日本への影響も無視できまい。

 

中国外務省の報道官は、台湾の参加は「『一つの中国』原則下で行われなければならない」と述べた。参加したいなら同原則を認めよ、という露骨な態度である。

 

だが、WHO憲章は人種、宗教、政治信条などの差別なしに「すべての人々が最高水準の健康に恵まれる」権利を定める。テドロス事務局長は中国から巨額投資を受けるエチオピアの元保健相だが、政治的理由での台湾排除はこの権利にも反しよう。

 

台湾での感染を受け米国務省高官は「台湾を排除するのではなく一段と関与させるよう働きかけたい」と述べた。台湾のWHO参加は日本の公衆衛生にも不可欠である。米国とともに強く働きかけるよう安倍晋三政権に求めたい。

 
1月25日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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